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みんなの九州きっぷ旅行記① 日本最長の在来線特急に乗る(博多ー枕崎)

こんにちは、かもめ(@kamomeNo3885)です。

みんなの九州きっぷというきっぷをご存知でしょうか。

去年から今年の初めにかけてJR九州で発売されていたきっぷです。

このきっぷはなんと1万2000円で2日間JR九州内の全ての列車が乗り放題になるというもので、さらに事前予約すれば特急列車や新幹線の指定席にも6回まで乗車できます。

今回はこのきっぷを駆使して九州一周旅行をしてきたのでその様子を紹介いたします。

九州は私の出身地でもあります。とても素晴らしい見所がたくさんありますので是非楽しんでください。そして皆様も是非九州を旅行されることをお勧めします。

 

この切符の有効期限は2日間ですが、関西から九州までの移動を含めると今回の旅行は3泊4日となりました。使用する切符はこちらです。かなりの量です…

出発前に予定を立てて、指定席券もすべて6回分予約していました。この類のきっぷで6回分の指定席を使い切る人はなかなかいないのではないでしょうか。

今回の旅行で使用するきっぷ

旅のはじめは博多駅から

さて私は関西に住んでいるのですが、前日の夜から新幹線に飛び乗り博多に前乗りしていました。朝一番の列車に乗ってこの切符を有効活用するためです。

朝6時に泊まっていた天神のネットカフェを出発し博多駅に向かいます。この時間帯の天神はまだまだ人通りが少なく、いつもは人でごった返している天神の繁華街がいつもとは違って見えました。

明け方の天神

 

朝7時博多駅。まず乗車する第一走者はにちりんシーガイア号宮崎空港行きです。

これは知る人ぞ知る日本最長距離を走る列車(夜行列車を除く)。7時30分に博多駅を出発し小倉、大分と日豊本線の経緯、終点の宮崎空港に到着するのは13時20分です。

なんと6時間弱もの乗車です。

運行距離は413.1㎞。これは東京ー名古屋間の396.9㎞よりも長いです。

停車駅は博多、吉塚、香椎、赤間、折尾、黒崎、小倉、行橋、中津、別府、大分、鶴崎、臼杵、津久見、佐伯、延岡、南延岡、日向市、高鍋、佐土原、宮崎南、宮崎、宮崎空港です。

この長いに停車駅案内を聞くのもにちりんシーガイア号の特徴でもあり、旅情を掻き立てます。

通常この辺の特急は博多駅から大分までを結ぶ「ソニック」と大分から宮崎空港までを結ぶと「にちりん」いう2つの特急が別々に分割されて運行されています。

途中の駅で二つの列車を乗り継いだ場合、特急料金が別々でかかるため割高になってしまいますが、大分駅でソニック・にちりんを乗り継ぐ場合は特急料金が通算される規定となっており、運行ダイヤも2,3分で対面乗換できる構造になっているため、実質博多から宮崎空港まで一本の列車がスムーズに結んでいるといって良いでしょう。実際に博多駅の電光掲示板などでも「ソニック&にちりん 宮崎空港行き」と書かれている様子を見ることができます。「ソニック」と「にちりん」という別々の列車ですが大分駅でスムーズに乗り換えて宮崎空港まで行けますよという意味です。

 

しかし、1日1往復運行されているにちりんシーガイア号の場合は本当に読んで字のごとく博多駅から宮崎空港まで一本の列車で結んでしまいます。そのため運行距離も日本最長であり乗車時間も6時間弱というとんでもない列車になっているのです。

通常、博多駅から宮崎もしくは宮崎空港まで行く場合は九州新幹線で八代まで行きそこからB&TというJR九州が運行する高速バスに乗って向かうのが一般的です。そちらの方が所要時間も短く運賃も安いからです。

したがって博多駅から終点の宮崎空港まで通しで乗車する乗客というのはほぼ間違いなく鉄道マニアでしょう。マニアの中でも日本で最も長い距離走る特急列車ということで人気なようです。もちろん私もその中の一人。念願の乗車が叶いました。

 

現在でこそ2021年3月のダイヤ改正で日豊本線から783系は追放されましたが、旅行した当時(2021年2月)はこのにちりんシーガイア号は783系で運行されていました。特急ハウステンボス号などでも使用される車両ですね。

シーガイア号はこの前面の形状から分かる通り前面展望が素晴らしい列車です。小倉駅で進行方向を入れ替えますので博多から小倉間は先頭の1号車自由席が前面展望車になります。

当然私は早めに博多駅に到着し1号車先頭の前面展望ができると席を狙ったのですが、あいにくそこには先客がいらっしゃいました。

(余談)783系について

ここで783系について少し紹介しておきましょう。ハイパーサルンとも呼ばれる列車です。

783系はJRで最も古い特急列車です。どいうことかと言うと設計自体は国鉄時代で行われ、JRに分割民営化された直後に真っ先にデビューした列車ということです。デビューは1988年です。

まず特徴としてそれぞれの車両がA室とB室で分割されているということがあります。普通列車はそれぞれの編成の前と後ろに乗降口がありますが、783系の場合は編成の中間に乗降口がありそれを境に右側と左側に客室が分かれているということです。

このように客室を細かく分けて運行することで、自由席と指定席の切り替えを柔軟に行っていました。さらにトイレを男性用と女性用に分けたのもこの列車が初めてだとか。通常、東海道新幹線なので男性用の便器が個別についているのは見かけるかと思いますが、783系の場合は男性用と女性用両方洋式便所が完備してあります。

JR九州には国鉄時代の特急は残っていませんので783系は最も古い特急車両ということになります。しかしながら、最高速度は時速130km。これから先の日豊本線の区間ではその性能をいかんなく発揮してくれることでしょう。

時速130㎞の運転は爽快!

さて列車は中津駅を出発して宇島駅を通過するぐらいから左手に美しい周防灘の景色を見ることができます。

783系は車体傾斜装置を備えていないのでそこまで感じませんが、通常この辺を走っている特急ソニックの場合は車体傾斜があるため海側に車体を傾けながらカーブを高速で通過していきます。初めて乗った際は列車がひっくり返って海に落ちるんじゃないかというくらいでした。ソニックは日本で2番目に速い表定速度を誇る列車であり、乗っていてとても爽快で楽しい列車です。ぜひ一度乗っていただきたいです。

 

列車は福沢諭吉の出身地である中津駅に停車し、さらに南下していきます。大分県の駅「天津駅」を通過したあたりから線形が良くなりまっすぐな線路が延びます。そこで783系は最高時速130kmの高速運転を見せてくれます。周りにはのどかな田園風景や畑が広がりとても爽快な眺めです。

ちなみに日本の在来線特急はどんなに車両の性能が良くても時速130㎞が最高ということになっています。これは途中踏切などで異常を感知した場合にすぐ止まれるようにするためです。車両の性能がいくら時速130km以上で運転できると言ってもブレーキ性能に限界が先に来てしまうのです。

しかし、琵琶湖の西側の湖西線を走る列車は最高時速130kmのリミットを取っ払おうという話がありました。なぜなら湖西線は特急サンダーバードなどを高速で運行させるために作られた路線であり、全区間が高架線で踏切がない路線です。そのためブレーキ性能を気にしなくても良いだろうという話です。新幹線の高速走行できるのも踏切がないからという理由があります。

実際にサンダーバードは時速130km超えた高速運転をするという話がありましたが、そんな話が持ち上がっている最中に皆さん記憶に新しい福知山線での脱線事故が起こりました。そんなところで最高時速をさらに引き上げるなどできるわけがありません。ということでこの話はお流れとなりました。

別府湾の車窓が美しい!

別府駅を超えると、進行左側に美しい別府湾を眺めることができます。特急ソニック号の場合はここで「世界の車窓から」でおなじみの石丸謙二郎さんのアナウンスが入ります。783系では入らないみたいでした。

高速化された宮崎の鉄道に潜む悲惨な事故の歴史

大分駅を出発してからはにちりんシーガイア号の真骨頂です。

博多から大分駅間は1日に何往復もの特急ソニック号が運行されているため、線路の整備も行き届いており高速走行が楽しめます。しかしながら大分から先は特急列車とは思えないノロノロ運転が続きます。需要の少ない地域ですから仕方ありません。さらにここから先、列車は宗太郎峠越えをしなければなりません。

宗太郎峠とは大分県と宮崎県の県境に位置する峠で、ここを走る列車は1日1本とか2本なっています。終電が朝の6時半とかなので本当に狂っています。日本一早い終電だそうです。

青春18きっぱーには「日本一の難所」と言われ、さらにその普通列車にも運用の関係で特急用車両の783系が充当されるというおもしろっぷりです。つまり普通列車用の運賃だけで特急用の車両に乗れちゃうというわけです。

宗太郎峠の直前の停車駅が大分県内の佐伯駅ですがこの駅の発車時刻が11時4分。宗太郎峠を越えると宮崎県内の温度延岡駅に停車しますが、この延岡駅への到着時刻は12時7分です。つまり1時間近くドアを開けることなく列車は走り続けます。

宗太郎峠を越える日豊本線の路線図。宗太郎駅は日本の秘境駅ランキングで毎年10位以内に入る有数の秘境駅。

 

延岡駅に停車した後は時速110km程度の高速走行を再開します。宗太郎峠の区間が時速60㎞から70kmでノロノロ登っていたのに比べると雲泥の差です。

実は延岡から宮崎空港までの間は宮崎県と延岡の地元企業「旭化成」がお金を出し合って高速化工事を実施しているのです。

一時期、旭化成は宮崎空港まで自家用のヘリコプターを用いて移動し、そこから出張の人を送り出していました。しかし、ある日、ヘリコプターが山に衝突して乗組員が死亡。

それからヘリコプターを列車に転換し、JR九州に懇願して宮崎空港までの高速化工事を実施したのです。宮崎県は陸の孤島などと言われますが延岡駅の時刻表を見ると、頻繁に宮崎空港行きの特急列車が発着していますがこういった事情があります。

産経ニュース
延岡駅の時刻表。凄まじい特急の本数である。

 

延岡から先は列車は海沿いを走ります。高速走行する列車から眺める海の景色は素晴らしい。

高鍋駅付近で

また日向市付近にかつてのリニアモーターカーの実験線を見ることができます。しかしここを視察に来た当時の運輸大臣であった石原慎太郎氏が「こんな鳥小屋みたいなところで実験してるんじゃねえ」と言ったとか言わなかったとかで地元からは猛反発を食らったそうです。

そんなわけで現在リニアモーターカーの実験線は山梨県に移設されています。

リニアモーターカーの実験線

日本一立地の良い?宮崎空港!

そんなわけで6時間弱の乗車を終え宮崎空港に到着。県庁所在地である宮崎駅から3駅進んだところが宮崎空港駅です。さらに宮崎から宮崎空港間は特急料金なしで特急列車に乗車して良いという特例が作られています。そのため本数もまあまああります。

宮崎空港は空港併設の駅。下の駅のホームの黄色い点字ブロックが見えることからもその近さがわかる。

宮崎空港駅はこのように空港併設の駅となっており、日本一アクセスの良い駅と言えるかもしれません。地下鉄やモノレールが空港に併設してあるというケースはたくさんありますが、長距離輸送を手掛けるJR空港に併設しているというのは珍しいのではないでしょうか。

とはいえ博多駅から地下鉄で不凍液という立地の福岡空港にはかなわないでしょう。にちりんシーガイア号は日本で12を争う立地の良い空港同士を結ぶ特急列車と言えます。

宮崎空港と宮崎駅を散策

宮崎空港

宮崎空港で飛行機を眺めながら宮崎名物のチキン南蛮を食べました。

それからさっともと来た道を引き返し宮崎駅へ戻ります。

ちなみに宮崎から宮崎空港までは途中「田吉」という駅を経由します。宮崎から田吉駅までは日南線を走るのですが、田吉駅から海側にそれ宮崎空港線と名乗って列車は宮崎空港まで行きます。

つまり、宮崎空港線は田吉ー宮崎空港の1駅間だけです。運行距離は1.4㎞で日本一短いJRの路線だそうです。

 

宮崎駅は初めて訪れたのですが思ってた以上に都会でした。というのもこの旅行の直前にアミュプラザ宮崎が開業していたからです。

宮崎駅は裏口の駅舎(東口)が捕らえられ「宮崎駅しょぼい」と言われることが多いですが、アミュプラザが開業した側の西口はかなり栄えています。ぜひ、西口の写真を掲載してほしいところです。

宮崎駅東口(ショボい方)
宮崎駅西口(ショボくない方)。右手には大きな商業施設「アミュプラザ宮崎」が立地し、左手奥に見える白い建物が宮崎駅。
JR九州の主要な駅にはこのように最上階に鉄道神社なるものを備えている場合が多いです。私が知っている限り博多駅と大分駅にもあります。

アミュプラザの屋上からの眺めは壮観で、宮崎の活気を感じさせます。

宮崎が陸の孤島、田舎とか言ってすいませんでした。

宮崎から更に南下!目指すは枕崎!

宮崎からはさらに南下し今日の目的地は九州最南端の終着駅枕崎駅です。宮崎から乗車するのは特急きりしま鹿児島中央行き。

鹿児島中央駅は昔は西鹿児島駅と呼ばれていましたが今は九州新幹線の開業に伴って鹿児島中央駅に名前を書いています。九州新幹線の終着駅です。

つまり、今日の朝博多駅を出発して、九州新幹線に飛び乗れば3時間弱で鹿児島中央駅には到着できたのですが、それを日本最長の急行特急にちりんシーガイアと在来線特急きりしまを乗り継いで丸1日かけて鹿児島中央までぐるっと移動してきたというわけです。

この日の行程

新幹線は早くて便利なのですが途中で降りて観光するということができないし、ずっと高架で沿線を身近に感じるということもできないのであまり好きではありません。

特急きりしま号は宮崎から鹿児島まで九州の山の中をズバッと結ぶ特急。

途中霧島駅からは錦江湾の沿いを走り進行左側に天気が良ければ桜島を望むことができます。とはいえこの日は気の短い2月。霧島駅を通過した頃はもう辺りは暗くなっており桜島を眺めることはできませんでした。鹿児島市内の観光は明日やることになっているので明日までの持ち越しです。

鹿児島中央駅からは指宿枕崎線に乗って枕崎駅を目指します。枕崎駅までは普通列車で2時間半程度です。

この指宿枕崎線ですが一部の鉄道マニアの間では日本で一番揺れる路線と言われています。赤字ローカル線なので線路の保線にかける予算がなく、かなり乗り心地が悪いのだそうです。実際に乗ってみてわかりましたがまるでアトラクションかのように揺れます。何回もお尻が座席から置いたタイミングがありました。

最後の1時間は完全に貸し切り状態でした
枕崎駅の駅舎の中

枕崎駅はこのようにそこそこにオシャレな駅舎がありますが、1日の利用客数は25名程度。

今日の旅はここで終了。

明日はいま乗ってきた枕崎行きの最終列車からの折り返し運用になる明日の始発に乗って日本最南端の駅である西大山駅を目指します。是非次回の記事もご覧ください。

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